Harumiは強い子だから…
2002年11月18日「Haruちゃんは強い子だから」
「Haruちゃんは強い子だから」
まだ小さい頃
母がよく口にした言葉を
何度も何度も
頭の中で
繰り返す
「Haruちゃんは強い子だから」
「Haruちゃんは強い子だから」
Harumiは強い子だから…
Harumiは強い子だから…
いつも笑顔でいれば
いつか本当の笑顔になれる
大丈夫
大丈夫
そう思っていれば
本当に大丈夫になる
強く願えば
どんな願いだって
きっと
叶う
そう、信じてきた
★★★
昨日は温かかったけれど
今日は風がものすごく強くて、寒いよ
外に立っていると
砂が目に入って痛いんだよ
今日起きたら
誰も家に居ないんだよ
お母さんもおばあちゃんも居なくて
おじいちゃんも居ないから
家が静かで静かで
寂しかったよ
おじいちゃんの居ないお座敷
すごく寂しいんだよ
早く帰って来てって
お座敷もテレビも座椅子もお座布団も
みんなみんな泣いてたよ
おじいちゃんが居ない食卓
すごく寂しいんだよ
だからHarumi
おじいちゃんの椅子に話し掛けてるよ
早く帰って来てって
話し掛けてるよ
もうすぐたくさん
みかんがうちに届くよ
こたつでみかん
食べようよ
もう少しで
お正月だよ
箱根駅伝だよ
見なきゃ、見なきゃ
ご飯が食べることができないからって
空腹に慣れちゃダメだよ
うちに帰ってくれば
あったかいご飯が
おいしいご飯が待ってるよ
病院のご飯は冷たいから
おいしくなんかないよ
だから早く
うちで一緒にご飯食べようよ
みんなで一緒にご飯食べようよ
おじいちゃんばかり
そんなに痩せちゃったらずるいよ
うちはおばあちゃんも
お母さんも
Harumiもおデブだから
みんな怒るよ
癌だか何だか知らないけれど
Harumiはそんなの信じてないよ
うちの家族は全員不死身なんだから
だからおじいちゃんも
ずっとずっと元気なんだから
Harumiの結婚式に出てもらうんだから
Harumiの赤ちゃん抱いてもらうんだから
おじいちゃん
家へ帰ろう
「帰れない」なんて言わないで
弱気になってるおじいちゃんが
Harumiは一番嫌いだよ
家へ帰る
家へ帰る
そう思えば
きっと
家へ帰れるから
家へ帰れる
家へ帰れる
家族6人でお正月を迎える
家族6人でお正月を迎える
おじいちゃんが居なくて寂しいよ
だから早く
帰って来て
★★★
こんなことを
息つく間もないくらいの勢いで
おじいちゃんに話し掛けていた
おじいちゃんは
泣いているように見えた
★★★
おじいちゃんの手は、今日もとっても温かかった
病室を出た途端
耐え難いほどの
辛さ、悲しさ、寂しさ、怖さが
私を襲う
口をキュっと結ぶ
前を見る
颯爽と歩く
Harumiは強い子だから…
Harumiは強い子だから…
Harumiは強い子だから
信じているから
もう、泣かないよ
1日も早く
あの
冷たくて
狭くて
孤独な病室から
おじいちゃんを
救い出すんだから
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